夢の中での約束。
2人をつなぐ音色。
桜の木々が私を導く。








逢 着








朝食をとった後、すぐに私たちは京邸を出た。
早くリズヴァーンさんに会って、多くのものを学びたいという気持ちがあった。
けど、本当は早く行かないと将臣君に会えなくなってしまうと思ったからだ。












きれいな桜並木。
将臣君と待ち合わせをした場所だ。
「ここが下鴨神社・・・」
辺りを見回してみても将臣君の姿がみつからない。
、さっきから落ち着かないみたいね」
「朔」
みんなが桜を眺めてる中、私はきょろきょろと辺りを見ている。
そんな姿が目についたんだろう。
「私は勝手には下鴨神社の桜が見たいのだと思っていたのだけど、違うみたいね」
「ちょっと、ね」
私は将臣君にもらったオルゴールを握り締める。
このオルゴールだけが昨夜の夢が本当だったことを教えてくれる。


「なんだ本当に会えるんだな」


少し諦めた瞬間だった。
後ろから聞こえる聞き慣れた声。
夢の中で私を励ましてくれた声。
「たかが夢だと思ってたが、言ってみるもんだな」
「・・・将臣君」
ゆっくりと振り返る。
そこには夢の中の制服姿ではなく、鎧をつけ腰に太刀をさげだ姿で将臣君が立っていた。
「兄さんっ。どうしてここに?」
突然あらわれた将臣君に譲君は驚く。
夢の話を譲君には全く伝えていなかった。
2人の約束だったから。
なんだか誰にも話しちゃいけない気がしていた。
「約束したんだと。ここで会おうって」
さんと?」
「あぁ。本当に会えると思ってなかったけどな」
笑顔で話す将臣君。
今ここにいることが嬉しくて私は何も喋ることができなかった。
喋ったら涙がとまらない気がした。
「それに、俺だけじゃないぞ」
「え?兄さんだけじゃ・・・」


「ゆっず―――っ」


譲君が話している途中で誰かが背中から抱きついた。
抱きついたと言うより、飛び付いたと言ったほうが正確かもしれない。
この世界で譲君を“ゆっずー”と呼ぶのはきっと1人だけ。
さん?」
っ」
将臣君だけじゃなく、にまで会えるとは思っていなかった。
ちゃん、会いたかったよぉ」
が抱きついてくる。
「私も会いたかったわ」
腕をまわしを抱き締め、今ここにがいることを実感する。
「・・・?」
なんだか違和感を感じた。
もともと身長差はあったけど、なんだか前とは違う。
改めてを見る。
も鎧をつけて腰に太刀をさげている。
「兄さんも、さんもその姿は?」
ちゃんとゆっずーはあの時から全く変わってないんだね」
“あの時”というのは学校で白龍と出会い、時空を越えた時のこと。
も将臣君もあの時と姿が違う。
私たちにはない変化が感じられる。
「私たちはつい最近この世界にきたばかりなの」
「どういうことなんだ、兄さんちゃんと説明してくれよ」
「まぁ、落ち着けって。俺たちがこっちにきたのはだいたい3年半前だな」
時空の狭間でわかれたことで長い時間のずれが出てしまったということだろう。
あの時手を放さなければ、なんて今更どうにもできないことを考えてしまう。
「ま、それからいろいろあったが、こうして無事ってわけだ」
いろいろの部分がとても気になった。
3年半の時間を苦労せずに過ごしてこれたはずはない。
住む場所、食べ物、仕事といろんな問題はあったはずだ。
2人はどんな3年半を過ごし、どう変わってしまったんだろう。
「それじゃ、説明になってないよ?」
「俺に三年半の身の上話をしろってのか?」
「うっ、それは確かに大変だね」
「だろ?ま、そうゆうことだ」
「そうゆうことだって、2人で話されてもこっちは全然わからないだろ」
「でもゆっずー詳しく説明してたら日が暮れちゃうよ?」
「別に全部話さなくてもいいから・・・さん?」
変わるものがあっても、変わらないものもある。
将臣君とに困らされる譲君。
今までに何度も見てきた光景だ。
その嬉しさに私はついつい笑ってしまった。
「ごめんなさいね。相変わらずだなって思ったら、つい」
ちゃん、知り合い?」
声をかけてきたのは景時さんだった。
2人に会えたことが嬉しくてまわりが見えていなかった。
今は景時さんや朔、白龍も一緒だったのだ。
「あ、はい。私と同じ世界にいた双子の姉の」
です。ちゃんがお世話になってます。あ、あとゆっずーも」
一歩前に出ては自己紹介をする。
その後ろで譲君は自分の名前をおまけのようにたされたことに少しショックを受けていた。
「俺は譲の兄の有川将臣だ」
ちゃんに将臣くんだね。オレは梶原景時。景時でいいよ。こっちはオレの妹の朔」
「はじめまして、将臣殿、さん」
でいいよ。私は朔ちゃんって呼んでいい?」
「えぇ」
朔は嬉しそうに頷いた。
「ありがと。で、この子は?さっきから将臣君にあつーい視線をおくってるみたいなんだけど」
が言っているのは白龍のことだ。
確かに白龍はさっきから将臣君を見ている。
「この子は白龍」
「将臣、耳にある・・・」
「耳?あぁ、この石か」
将臣君の耳にあったのは譲君や景時さんたちの体にあった宝玉と同じもののようだった。
「神子、力を宿した宝玉。八葉の証だよ」
「八葉?」
将臣君はわけがわからないという顔をしている。
さんは龍神の神子というものに選ばれて、八葉は神子を守る使命を持った人間のことらしいんだ。神子っていうのは――」
「なんか面倒くさそうだな。要はを守ればいいんだろ?いいぜ、これからよろしくな」
説明を遮られた譲君は不満そうな顔をしている。
「よろしく。・・・ってなんだか変な感じね」
「そうだな。っと言い忘れてたんだか、ずっと一緒ってわけにはいかねぇんだ」
「どういうこと?」
やっと再会できたというのにまたわかれなくちゃいけない。
そんな悲しいことはない。
「これでも忙しい身なんだ。京での用事はすんだからしばらくしたら、西の方へ帰らなきゃならない」
「え――っ。せっかく会えたのに?」
が文句を言う。
「しょうがないだろ。世話になってる人たちがいるからな。恩をあだでかえすわけにはいかない」
将臣君らしい考えだ。
だから私にはなにも反論することができなかった。
もわかってるんだろう。
それでも文句を言いたくなるのだ。
次会えるのがいつになるのかがわからないから。
「いろいろと訳ありでな。お前たちを連れていくわけにもいかねぇんだよ。悪いな」
将臣君は少しつらそうだった。一緒にいたいという思いはみんな同じなんだ。
「でも、しばらくは一緒にいられるんでしょ?」
「ああ、京を離れるまでは付き合ってやるぜ。俺もお前を守る八葉なんだろ」
「うん」




離れたくない。
やっと会えたのに。
思っていても口にできない言葉。
今ある時間を大切にしなくちゃ。
時間は流れゆくものだから。
















あとがき
  待ちに待った再会です。
 双子姉も久々の登場してゆっずーは心の中で大喜び。
 いきなりの2人の登場なんで驚きのが大きいかもしれませんけど。
  今回の話はなんと1日で書き上げました。
 私にしてはめずらしい。
 自分も驚きましたけど、闇音にも驚かれました。
 最近どんどん書くのに時間がかかるようになってしまってるんで。
 この調子で更新を増やしていきたいですねぇ。
 そのためにはキャラたちを動かすのに慣れなくてはいけません。
 有川兄弟はなんとか大丈夫なんですけど、他の方々が・・・。
 今私を悩ませてるのはリズ先生ですかね。
 まぁ、しばらくでてこないんで安心してますけど。
 この先私を悩ますであろうキャラはヒノエです。
 絶対に苦戦します。
 愛ゆえに、ですかね?
 ヒノエの台詞の勉強しなくちゃだなぁ。
 予習って大事ですよね。

 さぁ次回予告。
 再会は喜びだけじゃない。
 この寂しさ、どうすればいいの?

 感想ありましたら、おひねりにて。

 ―嵐楽 碧―



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