大将を倒すことはできなかった。
けど、大将が逃げたということで戦には勝ったことになる。
これからどうなるんだろう。
これから先、私はどうするべきなんだろうか。








時 代








私たちは京へやってきた。
「これがこの時代の京の町か」
今まで過ごし、見てきたものとはまったく違う町並み。
過去にきたことを改めて実感する。
、譲殿、私の家に来てはどうかしら?京に屋敷があるの」
「いいんですか?」
「えぇ」
朔の隣で景時さんも頷いた。
「この世界で俺たちが頼れるものは少ない。そう言っていただけると助かります」
「朔、ありがとう」




「これからどうしようか」
落ち着いている今だからこそ、話し合っておかなきゃいけない。
朔たちにずっと甘えているわけにもいかないから。
「どうやったら元の世界に帰れるんでしょうか。今は皆目見当つかないですね」
考えてもなにも答えはでてこない。
どうやってこの世界にきたのかもわからないのでは、帰り方をみつけることは難しいかもしれない。
「譲たちは、元の時空に帰りたいの?」
「そうだな、帰りたいと思うよ」
「神子も帰りたい?」
「帰りたい。2人を、と将臣君をみつけて、みんなで」
この世界には友達になれた朔や、とても優しくて一緒にいたいと思う人たちがいる。
だけど、この世界は私たちがいるべき世界じゃない。
「その二人は?」
は私の双子の姉で、将臣君は譲君のお兄さん。この世界に来る途中の光の中ではぐれてしまったの。
 ・・・2人とも無事だといいんだけど」
2人はどこに流されてしまったんだろう。
少しでも近い場所にいて、はやく会えたらといつも思う。
さんも兄さんもたくましい人ですから、何があったって平気だと思います。
でも、早く探してみつけないといけませんね」
「時空の狭間でいなくなったの?」
「あぁ」
白龍の問いに譲君がうなずく。
「もう一度あの場所に行ければ、なにか手がかりがみつかるかもしれない」
「わかった。それが神子の願いなら」
白龍は目を瞑る。
すると白龍のまわりが光りだす。
「これは・・・」
しかし、光はすぐに消えてしまった。
「・・・だめ、足りない。狭間が開かない」
「白龍、今のは一体なんだ?今のも宝玉の力みたいなものなのか?」
「うぅん・・・八葉とは、違う」
「神の力ですね。龍神の力、その片鱗なのでしょう」
「弁慶さん」
いつのまに現れたのだろう。
弁慶さんが部屋に入ってきたことに全く気付くことができなかった。
「朔殿、あなたもご存じだったのでしょう?この方は龍神応龍の陽の半身、『白龍』だということを」



話していく中で白龍が私を神子と選んだ龍神だということがわかった。
白龍の今の少年の姿からは全く想像がつかないけど、今の姿は私が、白龍の神子が人であるから模している姿なのだそうだ。
そして私たちをこの世界に連れてきたのが白龍だということもわかった。
しかし、今の白龍では私たちを元の世界に戻す力が足りないらしい。
龍神が持つ力は龍脈を流れる五行の力。
それを取り戻すには力を奪っている原因の怨霊を封印して、龍神の力を解放する方法しかない。
怨霊を操っているのは平家の人たち。
これからの平家と源氏の戦の中で、怨霊はたくさん現れるだろう。
私は怨霊を封印するために戦に参加することを決めた。
譲君に反対されたけど、私の気持ちはかわらない。
弁慶さんから怨霊が増えていると聞き、思いをさらに強くした。
自分の一族を、将を、子を怨霊にしてしまう平家を許せないと、とても悲しいと私は思った。
戦に参加するためには九郎さんの了承がいる。
九郎さんに会うために私たちは法住寺に向かった。







「九郎はこちらに来ているはずですが・・・あ、いましたよ」
「弁慶、急ぎの用か?」
九郎さんが弁慶さんをみつけ歩いてくる。
「こちらのさんが源氏と行動を共にする許可をもらいに来たんです」
「何を言っている、冗談はよせ」
「冗談ではありません。宇治上神社での戦いに勝利できたのはさんの力があったからこそです。
 さんには怨霊を封印する力があります。さんの同行は源氏にとっても悪い話ではないはずですよ。それに・・・」
弁慶さんは八葉の役目、この少年が本物の白龍であること、
私たちが元の世界に帰るためには怨霊を封印しなくてはいけないことを説明してくれた。
「どんな理由があっても、戦えない女や子供を戦場に出すわけにはいかない」
「しかしさんには剣の腕がありますよ?」
「自分の身は自分で守ります」
私は強い眼差しで九郎さんを見る。
ここで許しをもらえないと何も変わらない。
前に進むことができない。
「駄目だ。お前は太刀で戦うことに慣れていない。太刀での戦いができずに自分を守ることなど無理だ。
 お前を軍に同行させることはできない」
九郎さんはそう言って私に背を向けた。
「何をすれば」
九郎さんは足を止めてふりかえる。
私は絶対に諦めたくなかった。
たった一度認められなかっただけで、逃げたくない。
「何をすれば認めてもらえますか?」
「・・・・わかった、ついてこい」
「はい」
私は言われるままに九郎さんの後について歩いた。






「ここは神泉苑ね。九郎殿は何をにさせるつもりなのかしら?」
九郎さんに連れてこられた場所は桜がきれいに咲いている場所だった。
「どんな課題もクリアしてみせる」
「意気込みだけはあるようだな。見世物にするのは不本意だが」
そう言って九郎さんは剣をかまえた。
桜の花が散る。
それと同時に九郎さんの剣が振り下ろされる。
「すごく速い太刀さばき・・・」
九郎さんの剣は落ちてきた花びらを静かに断ち切った。
「今の技は花断ちという。俺の腕などまだまだだが、花を斬るぐらいはできる」
九郎さんは花を斬ることを“ぐらい”と言うが、それがどれだけ難しいことか私にはわかる。
花びらは自分が望む動きをしてはくれない。
剣に無駄な動きがあると花びらを斬ることなど絶対に無理だ。
とても難易度の高い課題を出されたことがはっきりとわかる。
「この程度で驚いているようでは、戦場に出るのはあきらめるんだな」
「あきらめません、絶対に」
「できるようになったら、見せてみろ。そうしたら認めてやろう」
九郎さんはそう言って帰っていった。
「大変な課題を出されてしまいましたね」
「はい。でも絶対に習得してみせます。時間はかかりそうですけど」
さん、今日は日が傾きそうですから明日にしましょう」
「そうね。暗くちゃ花は見えないし、焦っていては絶対にできない技だから。
でも、明日からどこで練習すればいいかな」
「この神泉苑でいいと思いますよ。京邸からも近いから、来やすいですしね」
「暗くなってきたわね。帰りましょう」
「そうだね」

明日から頑張ろう。
みんなで帰るために。
私はそう自分に誓い、帰路を歩いた。
















あとがき
  あれ?リズ先生が登場予定だったはず・・・・。
 今回の話で八葉が増えることはありませんでした。
 なんかみなさん喋りすぎなんですよねぇ、とくに弁慶さん。
 だからリズ先生を登場させることができませんでした。
 次は必ず出てきますよ。
  今回は弁慶さんにとてもふりまわされました。
 喋りすぎじゃないですか、あのお方。
 朔ちゃんとかゆっずーにあんまり喋ってもらえなかったよ。
 まぁ、2章(ゲームの)の始めは白龍や神子としてやるべきことの説明がはいるのでしょうがないんですけどね。
 長いのでつい会話を省略をしてしまった・・・。
 わかりやすくまとめられてたらいいんですけど。
 ん〜・・・なんとも言えない感じです。
 でも、今回説明の部分を書いちゃったんで後半は恋愛イベントに力をいれれます。
 今まで夢のはずなのに恋愛方面の話が全くなかったですからね。
 ここはとくに頑張らないと。

 次回予告です
 不思議、不思議、一体全体何事?
 ・・・・・・怪しいひとを見かけたら即連絡!!

 感想ありましたらBBSまたはおひねりにて。

 ―嵐楽 緑―



inserted by FC2 system