私はできることからは絶対逃げない。
私の力が必要とされる。
みんなの力が必要な私。
護られるだけじゃなくて、対等がいい。
緑 白 道
雪道を進む。
敵陣へ向かうという緊張感が体を包んでいる。
剣をちゃんと扱うことができるか少し心配になる。
「さん、大丈夫ですか?」
心配そうに譲君が私をみる。
譲君も私と同じように緊張しているだろう。
それでも私の心配をしてくれる。
そんな譲君らしい心遣いが少し私を楽にする。
「大丈夫。譲くんの弓の腕、期待してるからね」
「はい。サポートはまかせてください」
会話をしたことで譲君も気が紛れたのか、表情が和らいだ。
「平家の陣が近い、なにがあるかわからないぞ」
九郎さんの言葉に少しゆるんだ気持ちが引き締まる。
けど、体が固くなることはない。
「わかりました」
少し歩くと九郎さんが人の気配を感じとった。
「(何者かが来る。伏せろっ)」
物陰に隠れ、反対側から来る人を待つ。
「ふーっ。ここまでくればもう・・・」
鎧を着た人たちが歩いてくる。
暗い表情が見えて、敵には思えなかった。
「景時っ」
九郎さんが誰かの名前を呼び、立ち上がる。
やはり敵ではなかったらしい。
「兄上」
横にいた朔がぼそりとつぶやいた。
「わわっ!九郎?・・・あれ、朔も?」
景時と呼ばれた人は驚いた顔をしている。
「ど、どうしたんだいみんな」
「平家の陣に向かっているんですよ」
にこやかに弁慶さんは言った。
敵の陣に近いこの場でも、この人は笑顔を浮かべている。
「平家の陣を包囲するんじゃなかったのか?」
「それはそうなんだけどあちらもいろいろ歓迎の準備をしてくれてね」
景時さんはため息をついた。
「きてる大将も大物らしく、いったん引き上げ」
「そうですか」
弁慶さんが難しそうな顔をする。
歓迎の準備とはきっと怨霊のことだろう。
「こちらの方も源氏の武士なんですか?」
「あれ?そういえば知らない人が増えてるね。はじめまして、オレは梶原景時」
景時さんは笑顔で自己紹介をしてくれた。「オレは武士というか、
陰陽師というか・・・その真ん中くらいって感じ、かな」
武士という言葉がなんだか似合わない人だったので、そう言われて納得ができた。
「はじめまして、有川譲です。こちらはさん。この子は白龍」
譲君が私たちを紹介してれる。
「さんはどうやら白龍の加護を受けた神子のようなんです」
「白龍の・・・龍神の神子?そうかー。オレの妹も黒龍の神子なんだよ。朔っていうんだけど」
景時さんは朔のことを嬉しそうに話す。
そんな景時さんを見て朔は呆れた顔をしている。
景時さんの言葉からは朔のことが大好きなんだということが伝わってくる。
「しかし、景時大物というのは?」
私も気になっていたことを九郎さんが聞いてくれる。
「ああ、嫡孫の平惟盛だよ。相手は数は少ないけどほとんど怨霊ばかり」
「そうか・・・面倒なことになったな」
「惟盛一人ならなんとかなるんだけどね」
2人は頭を抱え悩む。
数が少ないが簡単には倒せない怨霊。
しかし、大将だけならなんとかすることができると景時さんは言った。
なにかいい案はないかと考えてみる。
「・・・その惟盛っていう人とだけ戦ったらどうでしょうか?」
自分の力と仲間の力を信じたうえでのひとつの案を私は思いついた。
「一騎打ちを申し込むというのか?」
「違います。私には怨霊を封印する力があります。そして景時さんには陰陽師としての力が」
「白龍の神子には怨霊を封印する力があるって聞いたことがあるけどホントなんだ」
私は頷く。
「九郎さんたち主力の人には大将戦に集中してもらって、他の怨霊は私たちで封印をして減らしていきます。
怨霊を弱らせないと封印はできないですが、みなさんの力でできないことじゃないと思うんです」
はっきり言って危険な案だと思う。
でも今はそれ以外の方法を考えることができない。
「なるほどね。弁慶はなにかある?」
「封印以外の手段では怨霊は、結局のところ蘇ってしまう。
つまりさんの力が頼りになってしまいます。さんの策と、僕が考えていたものとあまり変わりはありません」
「他に策がないのなら決まりだな。つらいだろうがやるしかない」
作戦は決まった。
あとはそれを成功させるために全力を尽くさなくちゃいけない。
それが一番難しい。
「、私もきっと助けになれると思うわ」
「ありがとう、朔」
「もしかして、朔も平家の陣に行く気なのかな?」
「当然です」
そう言い切った朔を見て景時さんは心配そうな顔をする。
鎌倉殿の命令で朔はこの戦に参加することになったと言っていた。
それがなかったら絶対に景時さんは朔を連れてきたくはなかったんだろう。
「悪い。止めようと思わなかったわけじゃないんだが」
「まあね。でも、仕方ないかな。友達を置いて帰れないよね」
景時さんは私を見る。
「ちゃんや朔の為にも頑張って少しでも早く大将を倒さなくちゃいけないね」
「よろしくお願いします」
戦で妹の為にという理由は不純かもしれないが、景時さんの言葉を聞いてリラックスができた。
私は1人で戦うわけではないんだ。
みんなで力を合わせて戦うんだと、朔と景時さんが教えてくれたように感じた。
「あ、でも神子様とか呼んだほうがいいのかな?」
「え?」
「だって、オレ八葉なんでしょ?この宝玉、変だなとは思ってたんだ」
景時さんは体に埋められた宝玉を指差す。
「兄上が八葉なんですか?」
朔は驚いた顔をしている。
「うん。景時は神子を護る八葉の1人。譲、九郎、弁慶、景時。八葉は神子の元に集まる」
白龍の神子を護るための八葉。
でも自分が神子だとしても、護られるだけは嫌だ。
「気にしないで、普通に呼んでください」
「本当?よかった」
「、不出来な兄が八葉でごめんなさい」
「そんなことないよ。景時さんの力、私とても頼りにしてるよ。景時さんが陰陽師だからこそできる作戦なんだから」
「ちゃんありがとう。朔に見なおしてもらうために頑張らなきゃな」
「兄上が頑張るのは当たり前です」
「朔・・・」
景時さんと朔の会話を聞いているとを思い出す。
少し気の弱い兄としっかりもの妹。
私との関係にとても似ている。
のことを考えると私の中にある不安が広がる。
将臣君も、今頃何をしているんだろうか。
「神子、大丈夫?」
「白龍」
私が悩んでるのに気付いたのか白龍が心配そうな顔で私を見る。
「大丈夫。大変だろうけど、頑張ろうね」
「うん。大丈夫、神子は私が護るよ」
笑顔で白龍は言った。
この笑顔に私は助けられてきた。
今はや将臣君のことよりも戦で勝つことを考えよう。
悲しい怨霊という存在を少しでも多く救うために。
→
あとがき
景時さんが登場!これで白虎が天・地そろいましたね〜。
これで八葉が5人。
あとは3人だ!次の話ではリズ先生が登場予定。
そして次からは第3章(ゲーム的には2章)です。
3章では書きたいことが多いので長くなりそうですね。
今考えてみても7話くらいはあるんじゃないかと。
書きたいところをのんびり書くために3章1話目は詰め込むことになっちゃいそうです。
うまくまとめれればなと思っております。
今回はちょっと無理があるかなぁと思ってます。
惟ちゃんと妹ちゃんを会わせるわけにはいかないのでこういう風になりました。
だって双子だからいくら惟ちゃんでも姉と似てるのに気づいちゃいますからね。
はっきり言って無謀な作戦ですよね・・・・。
でもここはちょっと押し通しちゃう感じで。
戦闘シーンもそんなに今回は重要ではないのではぶいちゃいます。
戦闘シーンがうまく書けないってのもありますが・・・・。
う〜・・・未熟者ですみません。
だいぶヒロイン、有川兄弟以外のキャラを動かすのになれてきました。
景時さんは動かしやすかったですね。
弁慶さんも慣れてはきたのですが黒さが足りないかなぁ、と。
もっと頑張らなくちゃですね。
ではでは次回予告(ちゃんと続いてるぞ!)
やっと落ち着ける場所へ。(京ではゆっくりできるのか?)
・・・新たな課題を出された冬華。
どーしよ!?どーする!??
感想ありましたらBBSまたはおひねりにて。
―焔 灯雪―