私たちは橋姫神社を目指して進む。
けど、怨霊が行く手を阻む・・・。








宝 玉 現 る








「橋姫神社まで、簡単に行かせてはくれないのね」
「でも今は止まってはいられない」
「神子、向こうに!」
白龍が叫ぶ。
白龍が指差す方から怨霊が向かってくる。
「え?」
「あっちにもいる!」
「囲まれてる?何体いるというの?」
数体の怨霊が四方からやってくる。
今の3人にこの数を相手する体力は残っていない。
「(1体でもいいから封印して進まなきゃ・・・)」
私は全体ではなく、正面1体だけに狙いをさだめる。
「危ないっ」
「神子っ」
朔と白龍に呼ばれ振り返ると、死角だった場所にいた怨霊が私に向って矢を放っていた。
危ない、と思ったときにはもう遅い。
矢は私へと迫る。
さん」
誰かに名前を呼ばれた後、視界が真っ黒になった。







痛みがなかった。
矢が体に当たったはずなのに。
「大丈夫、ですか?」
視界に光が広がり、目の間には―――
「譲君?・・・・矢がっ」
一瞬のことで気づけなかった。
譲君が私を矢から庇ってくれたのだ。
「痛っ・・・平気です。このくらい、たいしたことありません。さんは怪我はないですか?」
「私は大丈夫よ。・・・・譲君、助けてくれてありがとう」
「いや、たいしたことじゃありません。さんに怪我がなくてよかった」
傷が痛いはずないのに、譲君は私を安心させるために笑顔を見せる。
さん、俺が奴らをひきつけますから、その間に逃げてください」
「何を言ってるの?怪我をしてる譲君をおいて逃げるなんて私にはできない。この怨霊は私がなんとかするわ」
「本気で言ってるんですか?」
「神子、八葉の力はあなたの剣と盾。一緒に戦った方がいい。絆があなたと八葉を強くするから」
「・・・つっ・・・・なんだ、首が熱い?」
譲君は首を手でおさえる。
手をどけるとそこには小さい珠が埋まっていた。
「それはあなたの宝玉。八葉の力が宿る。神子を害するものから、守るための力が」
「守るための力・・・」
怨霊が動きだすのが視界に入った。
「譲君、今はゆっくり話してる時間はないみたい。とにかく正面突破でいきましょう。全部を相手にするのはきついわ」
「そうですね。周りは俺が矢で威嚇しますから、さんは正面の敵に集中してください」
背中を任せられる人がいるというのはありがたい。
私は朔と白龍と力をあわせ、前に並ぶ怨霊たちに集中する。


















「倒せたのか・・・・。なんだったんだ、今のは。魔法ってはずもないよな」
逃げるような形になってしまったけど、譲君も参戦してくれたおかげでなんとかピンチを脱出することができた。
怨霊の封印と今まで自分になかった力と印の場面を見て、譲君は驚いている。
「有川譲、あなたの、宝玉を宿す八葉の力だよ」
「宝玉?もしかして・・・これか」
戦闘前に現れた石。
少しきれいな普通の石にしか見えないけど、白龍はその石に力が宿っているっと言う。
「首に白い石がついてる。体に異変は?」
「大丈夫です。何かついてるのが妙な感覚ですが、このぐらいは別に。他に驚くことが多すぎて・・・」
「そうだね。私もまだ混乱してる」
「だいたい、ここはどこなんですか?俺たちは学校にいたはずなのに」
「宇治川らしいの」
「宇治川?京都の、ですか?」
全く予想していなかっただろう川の名前を聞かされて譲君は驚く。
でも、この反応をおかしいとは言えない。
私だってまだ理解できてない。
ついさっきまで私たちは鎌倉にある学校にいたんだから。
「きょうと?譲、ここは京だよ。時空の狭間に落ちて、狭間から抜けて出た。ここは時でなく場所だけでなく神子の時空とは違う、京」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。時空ってなんだ。京都でもないのか?」
「うん」
白龍は頷く。
「だけど、国内なんだよな?宇治川っていうくらいだし・・・」
「京の宇治川だよ。譲の世界の川とは違う」
「なんだよ、それ。ここは俺たちのいた世界じゃないっていうのか」
ショックが大きいらしく、譲君は頭を抱えている。
「うん」
「やっぱり信じられないよね。白龍、違う世界ってどういうことなの?」
「神子の時空とは違う時空にある世界ということ」
「違う時空にある世界、か」
同じ川があるのに、全く違う世界。
まるでパラレルワールドにきてしまったみたい。
「学校からこの河原に来る間、光の道みたいなところを通りましたよね。あれが時空を越えたってことなんでしょうか」
譲君の言うとおり、あのとき通ってきたところは『光の道』という言葉があてはまる。
光に流されるっていうあのときの感覚を思うと、時空を越えてしまったというのが少しだけ納得できた。
「そう考えた方がいいかもしれないね」
「俺たちがいた世界じゃないってことは薄々気づいていたんです。鎧を着た怨霊に、電信柱もない空、車も電車の音も聞こえない。
現代ではありえないことです」
譲君は辺りを見回しながらそう言った。
「服が和服に変わっていたことにも驚きました。でも、弓があるのが俺にはありがたいです。なんだか物騒な場所のようですからね」
「うん。だから急いで他の人たちと合流しないと」
「他の人たち?」
「橋姫神社に行けば人がいるらしいの。・・・今ゆっくりそのことについて話してる時間はないわ。
また怨霊に囲まれても、次は逃げれるかわからない。道々説明していくから」
朔のこと、白龍のこと、白龍の神子の力のことと話すことはいろいろある。
話すよりも身の安全を確保することの方が今は大事。
「わかりました」
ちゃんと現状をわかっている譲君はまだ混乱しているだろうが頷いてくれた。



譲君に会えて安心することができた。
や将臣くんも同じこの世界にいるだろうっていうことを強く信じることができる。
もしかしたら橋姫神社にいるかもしれない。
そんな希望をもち、4人になったメンバーで橋姫神社を目指す。
















あとがき
  次回予告通り、ゆっずーの登場です。
 一応、ゆっずーは双子姉の相手キャラなので今回はそんなに活躍してません。
 ていうかゆっずーを活躍させようとするとなぜかギャグの方へもっていってしまいそうで怖かったんです。
 とりあえず合流っていうことをメインに書きました。
 ゆっずーに再会できたことで双子妹ちゃんもちょっと安心できた感じですかね。
 知っていると人と初対面の人とでは緊張感が全然違いますから。
 初対面ですが、すでに妹ちゃんと朔ちゃんは仲良しさんですよ。
  早く2章を終わらせたいという思いがあります。
 やっぱり一番明るく恋愛的な部分が書けるのが3章なので。
 ネタがどんどん膨らんでいきます。
 ゆっずーのやられっぷりを書くのが一番の楽しみですね。
 後半になってくるとちょっとお互いの立場的なものでラブラブできませんから。
 でも2章はまだ終われないみたいです。
 今回の章ではいろんなキャラたちが出てくるので長くなっちゃうんですよねぇ。
 あっさり終わりたいんだけどなぁ・・・。

 それでは次回予告。
 犬の散歩は宇治川で。
 でもいったい飼い主は誰???

 感想ありましたらBBSまたはおひねりにて。

 ―嵐楽 緑―



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