将臣くんの手を掴むことができなかった。
強い光に負け、譲くんの手を離してしまった。
、将臣くん、譲くんはあの光の中、どこにいってしまったんだろう?
そして私はどこへ行くの?








華 開 く








光から解放され、目をあけると全く知らない景色が広がっていた。
「ここは・・・みんなは?」
辺りを見回すけど、3人の姿は見えなかった。
かわりに鎧をつけた人に囲まれている女の人が視界に入った。
「鎧・・・本当にここはどこなの?」
私がそう呟くと、聞こえてしまったのか鎧の人がゆっくりと私の方を振り返った。
「っ!!」
私の方を振り返った鎧を着ているのは“人”じゃなかった。
正体がなんなのか全くわからなかったけど、人じゃないことだけは確かだった。
鎧は肩を揺らしながらだんだんとスピードを上げて私へと向かってくる。
太刀をかまえる鎧。
私は武器を持っていないのに、鎧の太刀の攻撃を防げるのだろうか?
鎧が太刀を振り上げた瞬間、誰かが目の前に現れる。
「あなた・・・」
光に包まれる直前に現れた少年だった。
少年の持っている太刀が鎧の太刀を受ける。
けど少年と鎧では身長差がある。
それに少年は剣術が得意なようには見えない。
「くっ」
力負けしてしまい、少年が太刀を落としてしまう。
私を狙っていた鎧が少年に狙いを変え、太刀を振り上げる。
「危ないっ」
私は少年が落とした太刀を拾って鎧の太刀を受け、弾く。
「大丈夫?」
声をかけてくれたのは、さっき鎧に囲まれていた女の人だった。
きっと1人減った隙から逃げてきたんだろう。
「あ、はい」
鎧たちがゆっくりと起き上がり私たちの方へ向かってくる。
「怨霊よ、お前の相手は私でしょう。あなた、お逃げなさい。ここは、私が」
女の人は鎧を見て怨霊と言った。
「でもあなたは?」
「私は怨霊たちに語りかけ、鎮めることができるの。お願い鎮まって・・・」
女の人は怨霊に語りかける。
けど、怨霊はまっすぐに私たちに向かってくる。
「このままじゃだめ。私には剣の腕があります。力になれるはず」
「あなた・・・ありがとう。あれは怨霊。悲しみや痛み、嘆きが降り積もった存在よ」
「神子、龍の加護をあなたに。戦う力を」
そう言って少年が私の隣に立つ。














「終わった・・・」
なんとか3人の力で鎧を倒すことができた。
呼吸が荒くなる。
真剣は竹刀や木刀とは重さが違う。
相手の力も道場で経験していたものと全く違った。
今までと何もかもが違う世界。
「えっ」
倒したと思っていた鎧が音をたてながら起き上がる。
「どうして?」
「やはり無理なのね。封印の力を持たない私では・・・」
「神子封じて、あなたの力で」
少年が強い眼差しで私を見る。
「私の力?」
「あなたが・・・私の対、白龍の神子なの?・・・・封じましょう。
あなたが白龍の神子なら封印の力があるわ。私もあなたを助ける。怨霊の力を鎮めるから」
女の人が胸の前で手を合わせつぶやく。
「お願い黒龍、私に力を」
学校で聞いた鈴の音が響く。
「神子、願って。封印の力を」
「願う?力を・・・?」



私が神子?
封印の力?
この世界にきてからわからないことばかり。
・・・けど、私にできることがあるのならば。
私の中にある力が必要とされるなら。
その力を無駄にはできない。
私に力があるならば、私はその力を願う。



鈴の音がまた鳴る。
「めぐれ天の声」
言葉が頭に浮かぶ。
「響け、地の声。かのものを封ぜよ」
2人の声が重なる。
鎧が光に包まれ、そして―――


「消えた・・・」
「怨霊は封印されたわ。よかった、あなたのおかげね」
「いえ、私は何も。最初に助けてもらったのは私のほうです。それに、この子にも」
よくはわからないけど、さっきの封印の力はこの少年の存在が関係してる。
「私は神子を助力する」
少年は真剣な眼差しで私を見る。
「名前を聞いてもいいかしら?私は梶原朔というの」
です。あの、朔さん」
「ふふっ、そんな風にかしこまらないで。朔と呼んでくれると嬉しいわ」
「朔?」
「そう」
朔は笑顔で頷いた。
「あなたの名前は?」
「名前?」
少年は首を傾げる。
「名前ってどういうもの?」
「人があなたを何と呼ぶか。そうでないなら、なんと呼ばれることをあなたが望むかよ」
「いろいろと音は違うけれど、白龍と呼ぶ人もいた」
「白龍?」
「龍神の名と同じね。白龍の神子、あなたに力を与える神の名だわ」
少年は私を神子と呼ぶ。
女の人は私を白龍の神子だと。
そして、この少年がその神子に力を与える神だと。
「気になっていたんだけど、私はなんで神子と呼ばれるの?封印の力があったから?」
「その力は証だわ。封印は白龍の神子が持つ力、私にはない怨霊を業から解き放ち浄化する能力よ」
私だけが持つ「封印」の力。
どうしてそれを私が持っているんだろう?
「でも、今の封印どうしてできたのかがわからない。あの言葉も全然知らなかったのに・・・」
「あなたが行った封印は白龍の神子に授けられた稀なる力よ。
鎌倉殿は黒龍の神子でも怨霊を鎮められると命じられたけど・・・」
朔はうつむき悲しそうな顔をする。
「黒龍の神子の力では・・・私では怨霊を封じることはできない。
怨霊の声が響くばかりで動けなくなって、気付いたら一人で、この宇治川の戦場で惑うばかりだったわ。
でも、あなたと共にあるなら私・・・」
まっすぐ私をみつめる朔。
その瞳に私は答えることができるんだろうか。
「だけど、私はまだ自分の立場が理解できてないの。それに宇治川って・・・」
、焦らないで」
「でも」
頭がパンクしそうだった。
鎌倉殿、黒龍の神子、宇治川の戦場・・・、よくわからない単語が続く。
私の中にある不思議な力。
それが一番私を不安にさせる。
「神子・・・」
白龍が私の服の裾をつかむ。
「神子、不安?」
「・・・・」
思っていたことを言い当てられ、私は言葉を失う。
「大丈夫、神子は私が護るよ」
「白龍・・・」
よくわからないけど、白龍の言葉で私の不安は少し消えていった。
確かに私には封印の力があった。
その力は白龍の神子の証。
この事実は変わらないのだから逃げてはいけない。
、まずはこの場所を離れましょう。ここは、さっきのような怨霊がまた現れるわ」
「じゃあ急がないと」
また怨霊にあったとして、今の戦力では長期戦はきつい。
「宇治川の下流に、橋姫神社まで行けばきっと誰かに会えると思うの」
「一緒にいってもいい?」
「もちろん。さぁ、行きましょう」

私たちは歩く。
橋姫神社を目指して。
















あとがき
  双子妹ちゃんの登場です。
 ゲーム本編に入り、白龍と朔ちゃんが出てまいりました。
 最初の方で自由にしちゃうと後半私のことだから混乱すると思うので、本編での台詞をなるべく使う方向にしました。
 2章ではほぼこんな感じでいきます。
 できないところももちろんありますけどね。
  新キャラ朔ちゃんですが今のところ動かしやすいキャラですね。
 白龍は・・・・まだわからないです。
 なんか今回出番少なくなっちゃって。
 神子のそばにいるだけであんまり喋らない、みたいなイメージが私の中にあるようです。
 だからこれからもいるのに出番が少ないかも。
 これを動かしにくいと言っていいのか微妙なところです。
  結局ゆっずーはでてきませんでした。
 出てきてもそんなにゆっずー再登場シーンは大事に書かないかも。
 ゆっずーは双子姉の相手なので。
 スポットを当てるのは3章でかなぁ、と。
 だから2章は双子妹の章って感じで。

 それでは次回予告(恒例になってしまうんだろうか???)
 橋姫神社を目指して進めっ。そして今度こそゆっずー登場か!?

 感想ありましたらBBSまたはおひねりにて。

 ―嵐楽 緑―



inserted by FC2 system