ゴーンッ。





折れた大根は惟ちゃんの頭に当たった。
ぱたりと倒れてしまう惟ちゃん。
「惟ちゃーん」
惟ちゃんに慌てて駆け寄る。
「大丈夫?」
「完全に気を失ってますね。いったい何をしていたんですか」
経正さんは惟ちゃんに当たった大根を見る。
「野球してたの」
「やきゅう?」
「俺たちの国の遊びだ。あー完全にのびちゃってるな」
将臣くんは惟ちゃんを見る。
「その遊びは野菜でするものなんですか?」
経正さんの目がなんだか怖い。
「えっと・・・それは・・・」
素直になぜか答えられない。
さん?」
「・・・野菜でするものじゃないです」
「野菜だけじゃなく、食べ物は遊ぶものではありません」
「ごめんなさい」
「将臣殿もですよ。しかも私たちが愛情を込めて作った野菜をこんな風にしてしまうなんて」
経正さんは本当に怒っていた。
初めて私は経正さんを怖いと思ってしまった。
「悪かった」
このあと経正さんの説教は2、3時間くらい続いただろう。
土のうえでの正座はきつかった。
あといつのまにか気が付いた惟ちゃんまで加わり一緒に怒られていた。
もちろん説教の内容は気付いたころには全く関係のない話になっていた・・・。


「あっつー会いにきたよ」
「敦盛、調子はどうだ?」
、兄上」
経正さんから説教を長時間受けちゃったから遅くなっちゃったけど、私は経正さんとあっつーに会いにきた。
今日はじゃがいもと大根を収穫したんだよ」
私は持ってきたじゃがいもと大根をあっつーに渡す。
が頑張っている声がここまで聞こえた。とても立派なものができたな」
「次はこの野菜使った料理また持ってくるね。絶対美味しいよ」
「それはが作るのか?」
「ううん」
「それならよかった」
あっつーは安心しきった顔をする。
「それ、どういう意味?なんでみんな私に料理させてくれないの?」
私が料理の話をするといつもみんな不安そうな顔をする。
いつも台所にいれてもらえない。
みんな笑ってるだけで理由を話してくれない。
「まあまあさん、落ち着いて」
「そういえば兄上。兄上が怒っている声を聞きましたが、なにかあったのですか?」
私はビクッとする。
説教中の経正さんは本当に怖かった。
「え?あ、あぁ。収穫中にいろいろあってね」
「そうですか」
「あ、あっつー聞いてほしい替え歌があるの」
私はあっつーんの所に来る途中に考えていたことを思い出した。
「かえうた?」
「もともとある歌の歌詞を変えて歌う遊び」
「詩を?」
「私の国のしゃぼん玉って歌なんだけどね」
私は一回咳払いをしたあとに歌い始めた。



 じゃがいもを投げた 大根へ投げた
 大根振って くだいておちた

 大根が飛んだ  向こうまで飛んだ
 惟ちゃんに当たって くだけてちった

 惟ちゃん倒れ みんなで笑おう



私は歌いおわったあと満足気な表情を浮かべた。
歌っている途中から、経正さんは隣で顔をふせた。
肩をふるわせてるからきっと笑うのを耐えてるんだろう。
「それは?」
「今日あったことを歌詞にしてみました」
「つまり、よくはわからないが大根が惟盛殿にあたり惟盛殿は倒れたと?」
「惟ちゃん完全に気を失っちゃって大変だったよ」
「それは大変だったな」
「ねぇあっつーも一緒に歌おう」
「私も?」
あっつーは驚いた顔をする。
「もう一回歌うから覚えてね」
私はもう一度歌う。



今日一日みんなで騒げてすっごく楽しかった。
いつも屋敷に閉じこもってる知盛と倒れちゃったけど惟ちゃんとも一緒に過ごせた。
これからもこんな楽しい毎日が続くといいな。

私は学校で学び、この先の平家を知っていたはずなのにそんなことを考えていた。















あとがき
  少し間があきましたが、第3話目です。
 今回のテーマはほのぼの平家。
 きっと平家でこういうのを書けるのは最初で最後になるかと・・・・。
 だから思いっきり楽しみました。
 そして予想外に長くなってしまった・・・・。
  今回は私も闇音もネタを相談中に暴走しました。
 『みんなで畑仕事』ってことしか決まってなくて考えてるとき、
 なぜか話が飛んでいき『大根VSじゃがいも』話になったんです。
 それでまぁいろいろありまして、今回のネタが完成。
 そして闇音作詞で歌も完成。
 この話を書いてたときは、惟ちゃんに脳内支配された時期でした。
 まぁ惟ちゃんだけじゃなくて経正さんと知盛とあっつーも。
 大集合にしてみました。
 前回挑戦したので知盛はなんとか、経正さんもキャラをつかむことができてなんとかなりました。
 ちょっと経正さんが全体的に大暴走してますがね。
  そして後半悩まされたのはあっつー。
 ドラマCDから地下室にって決めたはいいがどんな会話になるんだろうかと。
 キャラが上手くつかめず、清ちゃん同様台詞に困ってました。
 修正を繰り返し、今の状態に。
 まぁ、ましな状態になったと思います。
 とあっつーは仲良しさんですよぉ。
 あっつーののときとときと態度が全く変わってしまうんではないかと思っています。
  なんかもう平家ほのぼのを書けないと思うと少しさみしい・・・。
 次からは2章に入って双子妹ちゃんに視点にかわってしまいます。
 だからもう戦になってしまうんですよね。
 本当に切ないです。
 まぁ、切り替えていかなきゃですよね。

 それでは次回予告(今度は落ち着いて)
 とうとうゲーム本編に突入! 朔ちゃん&白龍はもちろん登場です。
 しかし、ゆっずーの出番はあるのか!?

 感想ありましたらBBSまたはおひねりにて。

 ―嵐楽 緑−



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