光に流され、妹と別れてしまい、目を開くと異様な光景が広がっていた。
迷 ひ 人
「ここは・・・」
辺りを見回してみる。
目の前に広がるのは将臣くんの家に似た塀と、見慣れない庭。
「どこ?」
「・・・んっ・・・あ、、大丈夫か?」
「将臣くんっ。私は大丈夫だけど、将臣君は?」
ちゃんたちと別れてからも、手を強く握って光の流れから私を守ってくれた将臣くん。
光から解放されたあと将臣くんは少し気を失っていた。
「多分大丈夫だ。・・・ここはどこだ?それに譲たちは・・・」
将臣くんは頭を押さえながら辺りを見回す。
「わかんない。気が付いたらここにいた。2人もいない。それに・・・」
私がうつむくと将臣くんは私の服を見る。
「のその格好、それに俺のは・・・鎧?いったいいつの時代だよ」
「制服、どこいっちゃったんだろう」
私は和装、将臣くんは鎧姿。
そして将臣くんの腰には太刀がささってる。
「本当にここはどこなんだ」
私たちは立ち上がり、庭を少し歩く。
私たちのいる場所はきっと誰かの屋敷の中なんだと思う。
塀の先が見えなくて屋敷の広さが全然想像つかない。
ここは本当にどこなんだろう。
学校の敷地内じゃないことだけはわかる。
「屋敷の人に会えれば話を聞けるのに、誰もいないね」
「こんだけ広い屋敷だ、お手伝いさんとかもいるだろ」
歩いていると後ろで音がした。
植物となにがが擦れるカサッていう音。
「ん?」
誰かがいるんだ、やっと人と話せると思って笑顔で振り向く。
その笑顔は“なにか”の姿を見たとき、消えた。
将臣くんみたいに鎧を身につけてる。
普通鎧をつけるのは戦争や戦いをする“人”。
けど、目の前にいる“なにか”は人と言えるようなものじゃない。
「キシャァァァァッ」
奇声をあげる。
「な、なんだあの化け物」
将臣くんも気付き、振り返っていた。
将臣くんの言った“なにか”を例えた“化け物”っていう言葉。
なるほどって思ったけど、なんだかしっくりこない。
化け物みたいに怖いものじゃなくて、もっと悲しい存在に感じる。
「、逃げるぞ」
なんでなんだろう?
確かに今私は怖がってるのに、その相手を悲しいって思うなんて。
「おい、っ」
「は、はいっ」
「ちゃんと聞いてるか?逃げるぞ」
考えることに集中しすぎて、将臣くんの声が聞こえてなかったみたい。
化け物がゆっくりと私たちに向かって進んでくる。
太刀を構え、その切っ先を私たちに向けて。
逃げようとするけど私がぼーっとしてたせいで距離はつめられてしまっていた。
太刀が振り上げられる。横で将臣くんの舌打ちが聞こえた。
「(もうだめっ)」
私は逃げることを諦め、目を瞑った。
太刀がぶつかり合う音が響く。
「・・・・」
ゆっくりと目をあけると、将臣くんが腰にあった太刀を抜いて化け物の太刀を防いでいた。
「逃げろ」
「将臣くんを置いて?そんなこと私はしない」
「・・・だよな。お前ならそういうと思ったぜ。ちょっと待ってろよ、すぐ倒す」
将臣くんは化け物の太刀を弾き返し、反撃にでる。
「うっ」
敵の剣が将臣くんの肩にあたったのが見えた。
「将臣くんっ!」
「これくらいなんともねぇ。これで終わりだっ」
一歩を踏み出し、最後の一撃を与える。
「やったぁ〜」
化け物は倒れた。
でもピクピクとしてて今にも動きだしそうだ。
「早くこの屋敷からでなくちゃ」
動き回ってたらまた見つかっちゃう。
戦闘がまた起これば私を守ってまた将臣くんが怪我をしちゃう。
私は必死に出口を目で探す。
「誰っ」
足音を聞き取り、私は叫んだ。
「それは、こちらの言葉だ」
今度はちゃんとした男の人だった。
でも、すごく危険な人だってことを私は感じていた。
「侵入者だと聞いてきたが・・・子供か」
男は将臣くんと私を交互に見る。
「子供だとしても、逃がすわけにはいかないぜ。怨霊を倒すほどの力か。さぁ、俺を少しでも楽しませてくれよ」
男が2本の太刀を構える。
すぐさま将臣くんも太刀を構えて私の前に立つ。
目の前に広がる将臣くんの背中。
また、太刀がぶつかり合う音が響く。
守られてるだけの自分に腹が立つ。
なんで私には武器がないの?
「おもしろい」
男がつぶやく。
この男の人は戦いを楽しんでる。
心の底から。
将臣くんは肩の傷が予想以上に深かったのか、うまく力を込められないでいる。
男の強い一撃を防いだとき、とうとう肩をおさえてしゃがみこんでしまった。
「もう、終わりか?つまらないな」
「くそっ」
悔しそうな将臣くんの顔。
私は守られてるだけ?
「まぁここまで戦えただけ十分か」
「まだ私がいる」
将臣くんの太刀を奪って構える。
「っ」
私は守られてるだけじゃない、守ることもできる。
「ほぉ」
「あんたなんかに負けないっ」
小さい頃からお父さんに習った剣道。
それが私の自信になる。
「強い、火のような目をする女だ」男
は私を強い眼差しで見る。
「え?」
「知盛、剣をおさめよ」
「父上」
知盛と呼ばれた男の視線の先には少年が立っていた。
知盛は少年を父上って呼んだ。
「そなたらは何者だ?どうして我が屋敷に忍び込んだのだ」
「忍び込んだんじゃないよっ」
私はなにも考えずに言ってしまった。
今の状況でそんなこと言って信じてもらえるわけないのに。
ただ私の頭ではそんな簡単なことに気付くことはできなかった。
「私たち気付いたらここにいたんだから。こんなとこ、知らないっ」
「落ち着け」
私の肩に将臣くんが手をおく。
「気付いたらここにとは、どういう意味だ」
「光に流され気付いたときにはここにいたんだ。俺たちは忍び込んだつもりはない」
「光に流され・・・。その瞳、嘘を申してるようには見えぬな。・・・・まさかそなたらは異世界の者」
少年はゆっくりと微笑んだ。
「父上?」
「知盛、客人だ。2人を屋敷のなかに案内するがいい」
そういって少年は屋敷のある方へ歩いていった。
よくわからないけど助かったみたい。
知盛に案内され、屋敷に向かう。
今頃ちゃんとゆっずーはどうしてるんだろう。
2人の無事を願う。
もっと安全なところにいるといいな。
→
あとがき
完全なるオリジナル章です。
姉を平家へという設定なので、この話はけずることができず頑張って書きました。
ゲーム通りなら時空を超えてすぐ、将臣君は平家にたどり着いてません。
でも、ゲーム通り流れ着き〜だと長くなってしまいますから、ね。
まぁ、そういうこともあり完全なるオリジナルになってしまったのですよ。
大変だった。
一番難しかったのは戦闘描写ですね。
戦闘描写本当にヘタでごめんなさい・・・・。
もうちょっとなんとかしたかったんですが、限界でした。
あ、そうそう知盛初書きですよ!
愛ゆえに、すっごく悩みました。
でも、そこそこ知盛のかっこよさが引き出せたのではないかと思っています。
もっと知盛はかっこいいですから、あくまでそこそこ。
っていうか清盛が難しいです・・・。
もう出したくないよ〜。
最後まで本当に出てこないかも。
だって台詞が全くの他人になっちゃうんだもん。
ゲームをやってなんとか清盛の口調を勉強ですね。
次回は平家ほのぼの話です。
きっと平家でほのぼのは最初で最後になってしまうのでは?
それでは次回予告(恒例になるかは謎)です。
大根が先に折れるのか?それとも先にじゃがいもがこっぱみじんになるのか?
そして惟ちゃんの運命はいかに。
感想ありましたらBBSまたはおひねりにて。
―嵐楽 緑―