心に響く鈴の音。
その音が運命の始まりを告げた。
始 ま り は 鈴
学校でよくある風景。
休み時間の教室。
移動のためばらばらと生徒が教室から出て行く。
「、移動教室だぞ」
椅子に座りボーっとしていると将臣がの肩を叩く。
「あ、ほんとだ。今日の移動教室ってことは・・・・・ちゃんと同じ」
「正解。そういうことはよく覚えてるな」
「だってクラス離れちゃったからこの授業だけが毎週楽しみなんだもん」
「はいはい。じゃ、呼びに行くぞ」
教科書を持ち、2人は教室を出る。
そして、すぐ隣の教室の窓から叫ぶ。
「ちゃん行っくよー」
「、そんなに叫ばなくても聞こえるわよ」
に呼ばれ、教室から出てくる。
「この季節は毎週この時間が苦痛だぜ」
将臣はため息をつく。
「どうして?」
「1階の渡り廊下通るだろ」
ここの学校の1階の渡り廊下は外に面している。
「なるほど。あそこは寒いものね。しかも今日は雨が降ってるし」
「2人とも置いてくよー」
勝手に進んでいたが2人を呼ぶ。
「ま、我慢するしかないんだけどな。行くか」
「そうね」
3人は特別教室に向う。
「もうそろそろ冬休みだな」
「早くクリスマスにならないかなぁ。毎年恒例のクリスマスパーティー、ほんっとに楽しみ」
は去年のクリスマスパーティーを頭に浮かべる。
毎年クリスマスに家、有川家は合同パーティーをする。
家が隣同士ということで家と有川家は親も子供も仲がいい。
「譲君のケーキにも期待ね」
「今年は私もお手伝いしようかな?ケーキ作ってみたいなぁって」
「、それだけはやめとけ」
の提案に将臣は必死で止める。
「私まだ死にたくないわ」
「将臣君もちゃんもひどいよー」
「だって本当のことよ」
「いじわるっ」
3人は今年のパーティーを思い、話を弾ませる。
「あ!将臣君教科書持って」
「え、あ、あぁ」
何かをみつけたのかは将臣に教科書を預け走り出す。
「何かみつけたみたいね」
走っていくの後姿をは笑顔で見送る。
「ゆっずーっ」
は前を歩く人に後ろから体当たりをする。
「わぁっ」
譲は急な出来事に驚き、手に持っていた教科書を落とす。
「あ、さんっ」
「ゆっずーも移動?」
何もなかったようには譲に問う。
「はい。で、いきなり体当たりってなにかあったんですか?」
「何もないよ。ゆっずーが見えたから」
「それだけですか?」
「他に理由はいらないでしょ」
当たり前のように言い切るを見て譲はため息をつく。
そこに追いついたと将臣が顔を見せた。
「やっぱり、譲君」
「さっすが。のことはわかってるな」
の横にいる譲を見て2人は言った。
「それってどういうこと?」
「がの走った先には譲がいるって言い当てたんだよ」
「そういうことよ。譲君、教科書拾わないと濡れちゃうわよ」
は譲の足元にある教科書をみつけ拾う。
「そうだった、ありがとうございます」
「あ、教科書といえば将臣君ありがとう」
教科書をもらうためには将臣の元へ。
そのとき、2人の少女は静かに響きわたる鈴の音を聞いた。
「「鈴の音?」」
横を見ると雨の中少年が立っていた。
その少年の姿は現代ではありえない格好をしている。
まるで遠い遠い昔を思わせる姿。
そして、その少年を見ているとなんだか不思議な気持ちになった。
「あなた、どうしたの?」
はその少年に声をかけた。
『あなたが・・・・私の・・・・神子』
少年がそう言ったとき、4人の姿は何かに呼ばれたかのように“現代”から姿を消した。
急な出来事に4人は何が起こっているのかが全くわからなかった。
今身に起こっていることを言葉にして例えるなら“光に流されている”。
しかしそれがどういう状態なのかわからない。
今まで自分たちは学校の渡り廊下に立っていたはずだ。
パニックに陥る中それぞれの場所を目で探る。
「ちゃーん」
「っ」
名前を呼び合う、しかし遠いのか近いのかがわからない。
「誰っ」
は誰かに腕を握られ驚く。
「さん、大丈夫ですか?」
「譲君。と将臣君は?」
「わかりません。さーん、兄さーん」
譲は大声で名前を叫ぶ。
「ゆっずー」
「譲っ」
どこからか返事がした。
そして譲とは2人の姿を目に写す。
「将臣君っ」
「っ」
手を伸ばす。
届け、と強く願いながら。
指が触れる。
その瞬間、無常にも強い光が邪魔をする。
2人の手が届くことはなかった。
→
あとがき
挑戦してしまいました、遙か3ゲーム沿い連載。
本当に最後まで書ききれるのかが不安です・・・。
これからは姉、妹とそれぞれの視点で書いていきます。
タイトルの“双珠”とは二つそろった宝玉のことをいうそうです。
これから先、ばらばらになってしまう双子ちゃん。
それでもどこか繋がっていて、頑張っていく2人を書いていきたいです。
感想ありましたらBBSまたはおひねりへお願いします。
―嵐楽 緑―